@article{oai:shitennojiuniversity.repo.nii.ac.jp:00000274, author = {坂田 , 達紀}, issue = {68}, journal = {四天王寺大学紀要}, month = {Sep}, note = {" 村上春樹の「とんがり焼の盛衰」は、伊勢丹デパート主催のサークル雑誌に1983 年に発表された、3600 字程度の分量の短編小説である。その後、単行本3 冊、文庫本1 冊、全集のうちの1 冊(いずれも短編集)に収載され、現在では高等学校国語教科書にも採録されている。  この作品もまた、他の多くの村上の短編作品と同様、字面を追って書かれていることそれ自体(たとえばストーリーなど)を理解することは容易いが、結局のところ作品全体として何を言わんとしているのか(たとえばテーマなど)を把捉することの困難な作品である。言い換えれば、ただ単に表面ないし表層を読むのみならず、内側ないし深層までをも読むことが求められる作品なのである。  本稿では、まず、作品「とんがり焼の盛衰」がどのように読めるのか、いわば読みの可能性を、本作品から読み取れる寓アレゴリー意に着目しながら考察した。ついで、本作品の文体的特徴を分析し、最後に、いわゆる村上文学全体の中での本作品の位置付けを論じた。  明らかになったことは、まず、読みの可能性としては、様々な寓意が読み取れることはもとより、その奥に、現代の人間社会に対する作者・村上春樹の批評精神が読み取れる、ということである。この批評精神のゆえに、この作品の価値は高まるのではないか、ということも指摘した。ついで、本作品からは、次のような四つの文体的特徴が析出された。   ⑴ 非現実を現実化する仕掛け(「炭取が廻る」仕掛け)が仕組まれている   ⑵ 様々な意味(寓意)が読み取れるアレゴーリッシュな文体である   ⑶ ユーモアの要素が見られる   ⑷ 遊離したシニフィアンが秩序をもたらす文体である  これらのうち、⑷の特徴は、この作品を特異なものにする重要な文体的特徴であった。最後に、作品「とんがり焼の盛衰」は、村上が「デタッチメント(かかわりのなさ)」を大事にしていた時期に書かれた、「デタッチメント(かかわりのなさ)」の考え方を色濃く反映した作品として、村上文学全体の中に位置付けられることを指摘した。併せて、本作品中の「とんがり鴉」は、後に書かれた長編小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』( 1985 年)に登場する「やみくろ」の原型と考えられる可能性についても言及した。   本稿のこれらの考察・分析の結果は、本作品を国語教材として用いる際にも参考になるのではなかろうか。"}, pages = {7--29}, title = {村上春樹の「とんがり焼の盛衰」について}, year = {2019}, yomi = {サカタ, タツキ} }